【1着に込める想い】

いつもブログをご覧いただきありがとうございます。
本日は仕上がり品のご紹介ではなく、こちらのスーツにまつわるお話です。

テーラーリベラがオープンして間もない頃、一人の紳士がふらっとご来店されました。
長年スーツをオーダーされてきた方でしたが、20キロ近く体重が減り着るものがなくなったとのことで、まずは1着ご注文くださいました。
その後も、当店で仕立てたスーツの着心地やシルエット、生地を大変気に入ってくださり、頻繁にご注文をいただくようになりました。
やがて私は、そのお客様の好みに合いそうな生地を意識的に仕入れるようになり、ご来店のたびに生地のうんちくを語り合い、いつも楽しい時間を過ごしておりました。
昨シーズンも、お好きそうな生地を買い付けお会いできる日を楽しみにしておりました。
しかし珍しくお越しにならないまま月日が流れ、先日ご婦人から一本のお電話をいただきました。
「○○の妻です。生前は主人がお世話になりました。」
一瞬で頭が真っ白になりました。
さらに奥様から、亡くなられた理由が癌であったことをお聞きし、初めてご来店いただいた際「ダイエットがうまくいって痩せた」と仰っていたのは、本当は闘病によるものだったのだと知りました。
奥様は続けて、
「主人は亡くなったとき、テーラーリベラのスーツを着て棺に入りたいと言っていたので、一番気に入っていたスーツを着せました」
とお話しくださいました。
それがお写真のスーツです。
この生地に一目惚れされ、嬉しそうにオーダーいただいたお姿は、今も鮮明に心に残っています。
その夜、私はお客様との思い出を振り返りながら考えました。
スーツはただ身にまとう衣服かもしれません。
しかし1着1着には、その方の想いやストーリーが込められ、その人生に深く関わる存在にもなり得るものだと改めて実感しました。
これからもお客様にとっての1着を「何千、何万分の1着」ではなく、「唯一無二の1着」として捉え、お客様がどの様な思いでお越しいただきお任せいただいているか等、背景まで想像し想いを込めて全力でお仕立てしてまいります。
素敵な時間を、本当にありがとうございました。
謹んでご冥福をお祈り申し上げます。
Tailor Libera
